内分泌疾患(ホルモンの病気)について

わんちゃんやねこちゃんの体内では、さまざまなホルモンが分泌されており、このホルモンは生命の維持に欠かすことができないものです。内分泌疾患とは、ホルモンの分泌やその作用の異常によって引き起こされる病態全体のことを表します。
以下はその代表的な症状です。

注意すべき症状の例
  • 今までより水を飲む量が増えた・おしっこの量が増えた
  • 明らかに元気・食欲がなくなってきた
  • 食欲は変わっていない、むしろ食べる量が増えているのに痩せてきている
  • なんだか以前よりお腹がぽっこりしてきた
  • 最近なぜか脱毛している
  • 昔と比べて皮膚や毛並みが悪くなっている
  • 昔は走り回っていたのに最近元気がなく走り回らない

この他にも様々な症状があり、必ずしも上記の症状を示さないこともあります。
普段からわんちゃん・ねこちゃんの些細な変化にも注意しつつ、定期的な健康診断により早期発見を心がけましょう!

代表的な内分泌疾患

糖尿病 副腎櫃機能亢進症について 副腎皮質機能低下症について

犬の甲状腺機能低下症について 	猫の甲状腺機能亢進症について

糖尿病

糖尿病はインスリンという血糖値を下げるホルモンの分泌不足などにより血糖値が高くなる病気です。
糖尿病では飲水量や尿量が増え、さらに体重が減少してきます。もし治療せずに放置しておくと食欲不振や嘔吐が続き命の危険を伴う事もあります。その他にも糖尿病を罹患していることにより、腎臓病や尿路感染症、白内障、ブドウ膜炎、肝疾患や慢性膵炎などが発症しやすくなります。
診断は多飲多尿などといった臨床症状の他に、血液検査での持続的な高血糖、尿検査での尿糖を確認することで行います。
治療としては血糖値を下げることにより臨床症状を無くす、または軽減することを目標とします。
そのためにインスリン投与や食物療法、そして適切な運動の実施が必要となります。
また、場合によってはインスリン抵抗性を引き起こす疾患の予防または治療、あるいは上記に示した続発疾患の治療を行うことがあります。

特徴的な症状
  • 最近よく水を飲み、よくおしっこをする
  • よく食べているのに体重が減ってきた
  • 目が急に白くなった

副腎皮質機能亢進症

別名クッシング症候群と呼ばれるこの病気は、副腎という臓器から分泌される副腎皮質ホルモンが過剰になる病気です。原因としては下垂体性、原発性(副腎腫瘍)、医原性に分類されます。
症状としては多飲多尿、多食、パンティング、腹部膨満、脱毛、軽度の筋虚弱、元気消失がみられることがあります。しかし中には明らかな症状が見られず、定期検診時の血液検査等で異常が疑われる場合もあります。合併症として全身性高血圧、腎盂腎炎、膀胱結石、糸球体腎症、うっ血性心不全、膵炎、糖尿病、肺血栓塞栓症などがあります。
診断には臨床症状の他に血液検査、尿検査、レントゲン検査、腹部超音波検査を実施し、さらに副腎皮質機能亢進症の可能性が高ければACTH刺激試験などの特殊な検査を行います。
副腎皮質機能亢進症は副腎皮質ホルモンが過剰になる病気です。そのため治療にはこの過剰分泌を抑制する必要がありますが、原因により治療法が異なってきます。

特徴的な症状
  • 最近よく水を飲み、よくおしっこをする
  • お腹がぽっこりしてきた
  • 体の両側の毛が抜けてきた

副腎皮質機能低下症

別名アジソン病と呼ばれるこの病気は副腎と呼ばれる臓器からのホルモンの分泌が不足することにより起こる病気です。
一般的な症状は元気消失、食欲不振、嘔吐、体重減少、その他にも下痢、虚弱、多飲多尿、腹痛といった症状がみられることがあります。これらは典型的な症状ではなく、この症状のみから診断することは難しいですが、血液検査で典型的な異常を示すことがあります。重篤な状態になると、低血糖、循環血液量の減少、不整脈などが起こり、死に至る危険性があります。
診断は病歴、身体検査所見、血液検査などによって副腎皮質機能低下症の可能性が疑われた場合にACTH刺激試験などの特殊な検査を行います。
治療には不足している副腎のホルモンの補充を内服薬あるいは注射により行います。
薬が適切な量かどうかを調べるために継続的な検査が必要になります。

特徴的な症状
  • 最近よく水を飲み、よくおしっこをする
  • 明らかに元気・食欲がなくなってきた
  • 下痢が治らない

犬の甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが不足することにより起こる病気です。
不足する原因としては、甲状腺そのものが原因の場合や甲状腺にホルモンを作るように指令を出す脳が原因の場合に分けられます。
甲状腺ホルモンの不足により元気消失や活動性の低下、体重増加、寒冷不耐性、その他にも皮膚病や外耳炎、被毛の変化、痒みを伴わない左右対称な脱毛といった特徴的な症状や、神経骨格筋症状(顔面神経麻痺やナックリングなど)、粘液水腫性昏睡といった命に関わるものまであります。診断には臨床症状、身体検査所見、血液検査、甲状腺ホルモンの測定結果などを組み合わせて行います。
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが不足していることが原因なので、治療としてはホルモンの補充が必要となります。治療効果が出るのに数週間から数か月かかることが多く、症状や血液検査などで確認しながら薬の量を調節します。

特徴的な症状
  • 体の両側の毛が抜けてきた
  • 最近元気がなく走り回らない
  • 皮膚病が多い

猫の甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンの生成・分泌過剰による全身性の疾患です。
ホルモンの過剰な生成・分泌の原因となる甲状腺腫瘤には甲状腺過形成、甲状腺腺腫、甲状腺癌があります。
この疾患は8歳齢以上の猫で最もよくみられる内分泌疾患です。症状としては体重減少、元気消失または活動性の亢進、嘔吐、多食、多飲多尿、被毛の変化などがあります。甲状腺機能亢進症は触診において甲状腺を触知できることがある他に、甲状腺ホルモンを調べることにより診断を行います。甲状腺機能亢進症では肥大型心筋症や腎不全、尿路感染症、全身性高血圧などの様々な合併症が認められることがあります。
治療としては、甲状腺ホルモンの過剰な生成・分泌を抑える必要があります。

特徴的な症状
  • よく食べているのに体重が減ってきた
  • 最近よく水を飲み、よくおしっこをする
  • 心拍が早い
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